先日、
「日本電産が多数買収しても失敗知らず」という素晴らしい実績について、
どのようにして失敗を回避したのかという記事が
某経済新聞で紹介されました。
主なポイントは以下です。
・投資銀行の話を鵜呑みにせず買収時にしっかり調査
・DCF法はブレるのでEV/EBITDA倍率法(8-10倍)で買収
・買収後にハンズオンで会長自ら伝票を一枚一枚確かめ改善策を実行
結論として、
「バイサイドは、買収をゴールとせず、買収後のPMIをしっかりやれば、
日本電産のようにM&Aで成功できる」という主張であり、
いつものごとく「のれんはいかん」「安く買収しないと失敗するぞ」
という冷や水記事と異なり、
前向きな内容がメインで好感できる面もあります。
しかし、
セルサイドにとっては、M&Aはビジネス人生の集大成です。
ここで終わりにしてはいけません。
セルサイドの立場から冷静に読むと、
・DCF法は不適切かのような評価方法という主張は真実か?
・EV/EBITDA倍率 8-10倍が適正相場という主張は真実か?
・本当にセルサイドFAはいい仕事をしているのか?
という疑問が残るはずです。
まず、
DCF法ですが、
たしかにブレます。
しかし、
DCF法でしか評価できないケースもありますし、
DCF法より納得感のある評価方法があるケースもあります。
あくまでケースバイケースです。
もしも唯一絶対の評価方法があれば、
そもそも世界的に複数の評価方法が残っているわけはありません。
簡単に評価できないから複数の評価方法が長年残っているのです。
「DCF法は価格が吊り上がる傾向にあるのでDCF法での評価を信じないように」
と言いたいのでしょうが、個別事情を無視した意味のない主張です。
EBITDA倍率法の方が高くなるケースもあるからです。
次に、
同じく保守一辺倒にEBITDA倍率法10倍限度説を流したいのでしょうが、
EBITDA倍率法は、
いつ時点のEBITDAを使うのか、
どのような調整をした後のEBITDAを使うのか、
その会社が成長ステージなのか安定ステージなのか衰退ステージなのか、
業種は何?市場は?競争は?
模倣・代替リスクは?
売上モデルと時間軸との関係は?
コストモデルと固変・変革期間との関係は?
M&A市場での需要の強さは?
経営リソースの獲得可能性は?
その他にもさまざまな要素を考慮せねば適正倍率は決まりません。
20倍でも安い、0倍でも高い、は、当然に存在します。
そもそも、いつもの「のれんは悪」という主張とも完全に矛盾します。
節税等の結果、純資産が非常に薄い会社はたくさん存在します。
純資産がEBITDAの1倍しかない会社の場合、
EBITDA10倍で買収すると、9倍分ののれんが発生します。
こののれんを5年償却すると1.8倍分ののれん償却が生じます。
バイサイドは会計上、5年間は赤字濃厚のM&Aをするわけです。
この「のれん償却」はどう処理するつもりなのでしょうか?
8倍でも高すぎるケースもあれば、
10倍でも安すぎるケースもあるのです。
最後に、一番大事なPMIです。
日本電産の取り組みは非常に素晴らしい取り組みであり、
M&A能力の高いバイサイドの動き方の1パターンと言えると思います。
まさに、叩ぎあげ、ご自身でボールペン1本買うのもコストがかかることを
意識している創業オーナー社長の『経営に対する覚悟』がにじみ出ています。
M&Aの失敗原因は、
当然のごとく、
1:高すぎる価格で買収してしまった
2:バイサイドの能力や意欲に問題がある
の2つにおおむね収斂しますが、
某経済新聞の記事は、1ばかりに焦点をあてたものばかりでした。
ようやく2にもフォーカスを(遠回しとはいえ)あてた記事として好感をもてます。
しかし、
伝票一枚一枚をバイサイドのトップが検証するのは、
削減可能なコストが存在している匂いがプンプンしているからでしょう。
まず「何かおかしい」と不思議に思うのが普通です。
なぜ、
セルサイドFAは、
売る前に発見しておくべき改善可能事項を放置したまま、
売却させてしまったのかという疑問が残ります。
「費用を削減してから売ればよいのに」、
という素朴な疑問が残りませんか?
明確な理由はありますが、怒られそうなのでやめておきます。
例えば、
EBITDA10の会社を売る際、
誰でも簡単にわかる削減可能費用が2あるとします。
調整EBITDAは12となります。
EV/EBITDA倍率を10倍とし120で売却してしまいました。
その後、バイサイドが隅々調査した結果、
さらに5の削減可能費用が見つかりました。
結果として調整EBITDAは17となり、
結果としてのEV/EBITDA倍率は7倍です。
バイサイドが7倍を割安と思うなら、
損をしたのはセルサイド、
損をさせてしまった原因は、セルサイドFAの仕事と言えるかもしれません。
もし、セルサイドFAが、事前の準備をもっと徹底したことで、
調整EBITDAが17あることを発見しておけば、
同じ10倍で170で売却できたかもしれません。
50増えます。
バイサイドもコスト削減という後ろ向きのPMIへの負担が軽くなり、
売上増加などの前向きのPMIに集中できます。
8倍でも136となり16増えます。
Win-Win-Winです。
セルサイドFAを名乗るなら、
削減可能費用について、
案件受託前からクンクン鼻を利かせるのは、当たり前の基本習慣です。
もっと他にも色々とやるべきことはありますが。
東京都港区西新橋3-2-2植竹ビル7階
シェルパ・キャピタル・アドバイザリー株式会社
代表取締役 稲村光威
<公式HP>
https://www.sherpa-capital-advisory.com/
<会社を高く売るためのM&A準備マニュアル>
https://www.ma-success-manual.com/
<会社売却成功ノート>
http://ma-success-note.com/
「日本電産が多数買収しても失敗知らず」という素晴らしい実績について、
どのようにして失敗を回避したのかという記事が
某経済新聞で紹介されました。
主なポイントは以下です。
・投資銀行の話を鵜呑みにせず買収時にしっかり調査
・DCF法はブレるのでEV/EBITDA倍率法(8-10倍)で買収
・買収後にハンズオンで会長自ら伝票を一枚一枚確かめ改善策を実行
結論として、
「バイサイドは、買収をゴールとせず、買収後のPMIをしっかりやれば、
日本電産のようにM&Aで成功できる」という主張であり、
いつものごとく「のれんはいかん」「安く買収しないと失敗するぞ」
という冷や水記事と異なり、
前向きな内容がメインで好感できる面もあります。
しかし、
セルサイドにとっては、M&Aはビジネス人生の集大成です。
ここで終わりにしてはいけません。
・DCF法は不適切かのような評価方法という主張は真実か?
・EV/EBITDA倍率 8-10倍が適正相場という主張は真実か?
・本当にセルサイドFAはいい仕事をしているのか?
という疑問が残るはずです。
まず、
DCF法ですが、
たしかにブレます。
しかし、
DCF法でしか評価できないケースもありますし、
DCF法より納得感のある評価方法があるケースもあります。
あくまでケースバイケースです。
もしも唯一絶対の評価方法があれば、
そもそも世界的に複数の評価方法が残っているわけはありません。
簡単に評価できないから複数の評価方法が長年残っているのです。
「DCF法は価格が吊り上がる傾向にあるのでDCF法での評価を信じないように」
と言いたいのでしょうが、個別事情を無視した意味のない主張です。
EBITDA倍率法の方が高くなるケースもあるからです。
次に、
同じく保守一辺倒にEBITDA倍率法10倍限度説を流したいのでしょうが、
EBITDA倍率法は、
いつ時点のEBITDAを使うのか、
どのような調整をした後のEBITDAを使うのか、
その会社が成長ステージなのか安定ステージなのか衰退ステージなのか、
業種は何?市場は?競争は?
模倣・代替リスクは?
売上モデルと時間軸との関係は?
コストモデルと固変・変革期間との関係は?
M&A市場での需要の強さは?
経営リソースの獲得可能性は?
その他にもさまざまな要素を考慮せねば適正倍率は決まりません。
20倍でも安い、0倍でも高い、は、当然に存在します。
そもそも、いつもの「のれんは悪」という主張とも完全に矛盾します。
節税等の結果、純資産が非常に薄い会社はたくさん存在します。
純資産がEBITDAの1倍しかない会社の場合、
EBITDA10倍で買収すると、9倍分ののれんが発生します。
こののれんを5年償却すると1.8倍分ののれん償却が生じます。
バイサイドは会計上、5年間は赤字濃厚のM&Aをするわけです。
この「のれん償却」はどう処理するつもりなのでしょうか?
8倍でも高すぎるケースもあれば、
10倍でも安すぎるケースもあるのです。
最後に、一番大事なPMIです。
日本電産の取り組みは非常に素晴らしい取り組みであり、
M&A能力の高いバイサイドの動き方の1パターンと言えると思います。
まさに、叩ぎあげ、ご自身でボールペン1本買うのもコストがかかることを
意識している創業オーナー社長の『経営に対する覚悟』がにじみ出ています。
M&Aの失敗原因は、
当然のごとく、
1:高すぎる価格で買収してしまった
2:バイサイドの能力や意欲に問題がある
の2つにおおむね収斂しますが、
某経済新聞の記事は、1ばかりに焦点をあてたものばかりでした。
ようやく2にもフォーカスを(遠回しとはいえ)あてた記事として好感をもてます。
しかし、
伝票一枚一枚をバイサイドのトップが検証するのは、
削減可能なコストが存在している匂いがプンプンしているからでしょう。
まず「何かおかしい」と不思議に思うのが普通です。
なぜ、
セルサイドFAは、
売る前に発見しておくべき改善可能事項を放置したまま、
売却させてしまったのかという疑問が残ります。
「費用を削減してから売ればよいのに」、
という素朴な疑問が残りませんか?
明確な理由はありますが、怒られそうなのでやめておきます。
例えば、
EBITDA10の会社を売る際、
誰でも簡単にわかる削減可能費用が2あるとします。
調整EBITDAは12となります。
EV/EBITDA倍率を10倍とし120で売却してしまいました。
その後、バイサイドが隅々調査した結果、
さらに5の削減可能費用が見つかりました。
結果として調整EBITDAは17となり、
結果としてのEV/EBITDA倍率は7倍です。
バイサイドが7倍を割安と思うなら、
損をしたのはセルサイド、
損をさせてしまった原因は、セルサイドFAの仕事と言えるかもしれません。
もし、セルサイドFAが、事前の準備をもっと徹底したことで、
調整EBITDAが17あることを発見しておけば、
同じ10倍で170で売却できたかもしれません。
50増えます。
バイサイドもコスト削減という後ろ向きのPMIへの負担が軽くなり、
売上増加などの前向きのPMIに集中できます。
8倍でも136となり16増えます。
Win-Win-Winです。
セルサイドFAを名乗るなら、
削減可能費用について、
案件受託前からクンクン鼻を利かせるのは、当たり前の基本習慣です。
もっと他にも色々とやるべきことはありますが。
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シェルパ・キャピタル・アドバイザリー株式会社
代表取締役 稲村光威
<公式HP>
https://www.sherpa-capital-advisory.com/
<会社を高く売るためのM&A準備マニュアル>
https://www.ma-success-manual.com/
<会社売却成功ノート>
http://ma-success-note.com/
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