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なぜM&Aでは「ピンチはチャンス」になるのか?

よくスポーツ等では
「ピンチはチャンス」と言われます。

どういうメカニズムかと言えば、
競争相手の典型的反応である 「焦り」「油断」「消耗」を通じ、
自分が置かれる競争の環境が劇的に改善し、
大逆転が生まれるのだと思います。

例えば、ボクシングの場合、
ダウンされたボクサーが、その数秒後に、ダウンを取り返し、
一気に逆転KO勝ちをするケースです。
本当にしばしば発生します。

これは、
対戦相手が自分からダウンを取ったことで、
「圧倒的有利な新たな環境」に置かれ、
少しでも早くKO勝ちしてリスクから解放されたいという「焦り」、
もう勝てるだろうと防御を忘れて攻撃する「油断」、
慌ててスタミナを消費するパワーパンチを集中砲火することで生まれる「消耗」、
が「自滅の穴」を作ってくれるからです。

あとは、この「絶好のチャンス」をものにするだけの
今までと少し違う「予想外の反撃」をするだけです。

攻防や戦略の中に一定以上の「複雑さ」があって、
「欲望」や「恐怖」に支配されやすい人間が舵を取っているのであれば、
基本的に「ピンチはチャンス」現象は常に起きえます。

例外は「複雑さ」が入り込む余地のない短距離・重量上げ等でしょう。
肉離れしたり骨折したら勝利はないはずです。

つまり、
「ピンチがチャンスになる」のは、攻防が「複雑」な場合で、
「ピンチはピンチのまま」になるのは、攻防が「単純」な場合です。

M&A取引は、私の知る限り、「最も複雑な取引」の筆頭格です。
一方で「単純さ」に伴うデメリットを我慢すれば、
「すごく単純」にもできてしまいます。

特に売り手オーナー様にとっては、
ピンチ時の考え方・動き方次第で、
数年後の所有資産が、大幅に変わるわけです。

身ぐるみ剥がされてるかもしれないし、
多額のキャッシュを携えてアーリーリタイヤしているかもしれません。

M&A会社売却は、
通常の時でも、様々な要因で、大きな結果の差が生じます。
ピンチの時には、通常の時よりも、さらにハッキリとした差が出ます。
判定のポイント差ではなく、KO負けかKO勝ちかの違いになるわけです。

「複雑さ」に対する対処をした人だけが勝者側に行け、
「単純」対応で楽をした人は敗者として搾り取られる側に落ちていきます。

資本主義市場の縮図です。

もし、M&A会社売却を検討中のオーナー様が、
危機的な状況において、
「それでも適正な評価をしてもらいたい」と思うのであれば、
この「逆転のメカニズム」を頭に入れておくべきと思います。

断じてやってはいけないことは、
ピンチにおいて、いまだに楽な「単純さ」を求めることです。
逆転チャンスがゼロになってしまいますので。

せっかく「隙間」がみつかっても、
事前のトレーニングでユニークな反撃を練習していないと
実戦では使いモノになりませんので、
早め早めに準備をするのが得策でしょう。

M&A取引おける売り手オーナー様にとっての対戦相手とは
一体誰でしょうか?

株式代金の大きさを直接争う買い手企業でしょうか?
事業の競合企業でしょうか?
DDで欠点を探してくる弁護士や会計士でしょうか?
お金を支払って雇うM&Aアドバイザーでしょうか?

答えは、YESでありNOです。
時と場合によってコロコロと変わります。
昨日の敵は今日の友、もよくありますし、
信頼していたのに裏切られた、もよく聞きます。

複雑なのがM&Aです。
だからチャンスが大きいのです。


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SCA代表自己紹介

ユニークな会社を高く売る | 業界初のセルサイド特化型FAのSCA 代表の稲村です。 簡単に自己紹介をさせていただきますと、 略歴: ■マクロ、国内外の財務分析等(大手国内生保) ※大所高所、長期的視点からモノを見る習慣をつけさせていただく ■企業価値評価、DD等(ビッグ4会計事務所) ※M&Aバイサイドの視点を学ばせていただく ■片手FA全般(独立系M&Aハウス、投資銀行) ※巨大企業~中小企業まで、海外企業~投資ファンドまで、多様な業種を経験 ■稲村公認会計士事務所開業 ■事業会社を創業(オーナーとして) ■SCA設立 ※セルサイド特化型FA | 企業価値向上コンサル | 未来志向M&A という経歴です。 「三つ子の魂百まで」と言いますが、 「ビジネスマンとしての魂」も最初の入社後の3-5年迄で 機会や困難に対峙する姿勢の大枠が出来上がると思います。 ビジネスマン・インストールの時代と言えるでしょう。 社会人デビュー直前、 学生時代に打ち込んだのは、ボクシングで、 体育会に所属してました。 ちなみに、ガチンコで殴り合った最強の相手は、 スーパーウェルター級(70kgくらい、村田のミドルの1つ下)の 現役WBA王者だった選手です。 2Rで6発のクリーンヒットをお見舞いするに止まり、 ポキポキと肋骨を2本折っていただきましたが。 米トップランク社に「アメリカで統一戦を組んでくれ」とお願いする役を 彼のジムの会長さんから、 当時クロスボーダーに力を入れるM&Aブティックハウスの M&Aバンカーだった私が仰せつかったのが契機です。 周囲から無理と言われる挑戦が好きなのかもしれません。 肋骨折られましたので、 2ヶ月ほど、くしゃみをすると激痛が走ったのは今でも最高の思い出です。 タイプとしては、カウンターパンチャーというタイプです。 とにかくガムシャラに前に出て手を出し続ける戦い方(インファイター) 距離を置きポイントを集めていく戦い方(アウトボクサー) の中間というか、いいとこどりをする戦い方です。 「打たれずに勝つ、しかも一発で倒して勝つ」という一番効率の良い戦い方ですが、 もっとも「準備」が大変な戦い方でもあります。

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